ルナ先生日記

浜松市中区佐藤にあるルナ動物病院 院長のブログです。 動物病院の先生は日頃こんなこと・あんなことを感じています。 ぜひおたのしみください。

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てんかん発作(ケイレン)

カテゴリー │脳・神経疾患

はじめて痙攣発作を起こした状態に立ち会えば、ビックリ仰天しますね。
子供は、風邪をひいて熱を上げた時など熱性痙攣をよく起こします。
こどもの舌が真っ青になり、泡を吹いて、ガタガタ震えた状態を目の前にし、
おたおたしない親はいません。

人がかかる病気は動物もかかりますので、動物にも当然ひきつけはあります。
問題なのは痙攣が長く続くことです。
長く続くことで、体温は上昇します。
通常動物の体温は38~39度もあります。
痙攣が長く続くと、体温が41度以上に上昇する場合があるのです。
こんな場合、痙攣を止め体温も低下させなくてはいけません。

一回でも発作がおきればすぐに治療というわけではありません。
通常の治療開始時期は
① 発作が1ヶ月に2回以上おきる場合。
② 5分以上痙攣が続く場合。
③ 群発して発作が起きてしまう場合。
といわれます。
痙攣が痙攣を誘発し、脳の興奮が持続することで痙攣が治まらなくなってしまうため、このような基準があるのです。

私も、この治療指針に従い投薬開始しています。
通常はフェノバールから開始し、臭化カリウムを加えコントロールし、それでも発作を起こすならゾニサミドです。
それでもコントロールできない場合は、進行性の疾患が必ずどこかにあります。
基礎疾患があれば当然その治療をしなくてはコントロールはうまくいきません。
投薬開始しない軽度の動物たちには、念のため座薬の抗ケイレン薬をお渡しし、5分以上痙攣が治まらない場合に使用していただいています。

本日来院したキャバリアちゃんは、痙攣が1時間も治まらず、40.3度に発熱した状態でやってきました。

すぐに痙攣の原因追求のため血液検査、心電図検査と平行して抗痙攣剤や鎮静剤で痙攣を抑えます。
このワンちゃんの痙攣は激しく、鎮静剤だけでは抑えることはできませんでした。
こうなると、全身麻酔をかけて眠らせ、脳の興奮状態を抑えないといけません。
注射麻酔やガス麻酔を使用します。
このワンちゃんには注射麻酔でしばらく維持し、気管チューブを入れてガス麻酔で4時間程度全身麻酔をかけました。
全身麻酔から覚醒した後に、痙攣は治まっているのが普通です。
それから、注射や内服薬で痙攣が起きないように維持していくのです。
コレでも改善しなければ決定的に脳障害が進行しているか、脳の興奮状態がかなり強い状態です。
もう一度、今度はなが~く全身麻酔をかけるしかありません。

痙攣発作の原因は無数にあります。
経験上、院内検査で原因がわかることはほとんどありません。
アンモニア・血糖・カルシウムなど、典型的に痙攣を起こす血液異常が原因であることは少ないのです。
心電計をつけてもわかりません。(通常発作時にしか不整脈になりません。)

一般的に年齢別に原因を考えると、診断がつきやすいのですが、
消去法で診断しても最終的にMRIと脳脊髄液の検査をしないと確定できません。
当院の患者さんで、明日、MRI検査のために三重県に行く方がいらっしゃいます。
脳腫瘍でなければいいのですが・・・。

1歳以下
頭部外傷、中毒、低血糖、髄膜脳炎、肝性脳症、水頭症、擬似症候性てんかん、特発性てんかん、低カルシウム血症、チアミン血症、ライソゾーム蓄積症、脳回欠損など
1歳から5歳
擬似症候性てんかん、水頭症、頭部外傷、髄膜脳炎、肝性脳症、特発性てんかん、中毒、低血糖、低カルシウム血症、脳血管障害、チアミン血症、脳腫瘍など
5歳以上
擬似症候性てんかん、髄膜脳炎、脳腫瘍、低血糖、肝性脳症、頭部外傷、中毒、特発性てんかん、脳血管障害、低カルシウム血症、チアミン血症、尿毒症性脳症、多血症など

このような疾患で、ケイレンの治療している方は多いかと思います。
こうした慢性疾患を含めどんな病気でも言えることですが、難しい病気であればあるほど獣医さんとの連携が重要です。
動物と飼い主さんと獣医師が三角形となり、みんなで協力し合って、病気と付き合っていきましょう。