猫の口内炎は治ることもあるんです

ルナ動物病院

2009年02月27日 12:16

猫の口内炎で苦しんでいる方は多いことでしょう。
皮膚炎での転院は多いと書きましたが、口内炎での転院も意外と多いのです。
食べたそうにしているのに食べられず、日に日に痩せて来る様子に飼い主さんは耐えられなくなります。
昨日来院したナーゴちゃんは、そうした口内炎を克服したのでご紹介します。
人は口の中に口内炎1つできただけで、ヒーヒー痛がり水を飲んでも涙を流します。
ネコちゃんの口内炎は、初期の症状は口臭や歯石、歯肉の発赤です。
しかし、初期の症状は毎日歯磨きをしていなければ気がつかないのが普通です。
頭を振りながら食べる、食べ方がおかしい、口を痛がる、
食べたそうにしているのに食べられない
などなどの臨床症状でようやく気がつき病院に来院します。
こうして飼い主さんが症状に気がつくころには、
口内炎は口腔内全体に広がり、口を開けるだけでも痛がりアクビすらできません。
歯磨きや口の消毒なんて到底耐えられない状態です。

口内炎の原因ははっきりわかっていません。
しかし、口腔内のばい菌が口内炎が悪化する原因となるため、
猫エイズや白血病など免疫が低下する病気では特に難治性の口内炎になります。

口腔内のばい菌の原因は歯周病なので、歯磨きが完璧ならば悪化する素因はなくなります。
悪化してしまった口内炎では口を触るだけで痛がるので、歯磨きどころではありません。
ましてや口腔内の消毒も思うように行かないのが普通です。
麻酔をかけ歯科処置をしても一時的なことで、すぐにばい菌は増えていきます。

当院ではこんな時、マクロライド系の抗生物質でコントロールしていきます。
この抗生物質は、週2~3回の投薬で十分効果が見られ、薬嫌いの猫ちゃんでも我慢してもらっています。
それでもよほど痛がる場合にステロイドを使用しますが、使用するのは通常のプレドニゾロンです。
長時間作用型のステロイドホルモンは、月1~2回の注射で済むため楽なのですが、
万が一副作用が出ると取り返しがつかないことになることがおおく、当院では使用してません。
しかし猫ちゃんが3日に1回の薬も飲めないのであるなら、使用せざるを得ないこともあります。
インターフェロンやアガリクス、酵素入り歯磨きなど併用できれば最高です。
最近ではCO2レーザーで粘膜表面を蒸散させたり、
疼痛緩和の目的でレーザー照射する病院もあるでしょう。

しかし、いずれの治療も治るわけではないので、症状はだんだん悪化し薬はきかなくなります。
先生は頭を抱え、患者さんが転院を考えるのはこの末期的な状態のころになります。

口内炎の根本的治療で薬がいらなくなる方法は、全顎抜歯しかありません。
しかし、麻酔できない状態やエイズや糖尿病などの基礎疾患があれば、
抜歯処置を行っても効果がない場合もあります。
こうしたことを理解していただき、歯科処置による全顎抜歯に踏み切ります。
犬歯、切歯の歯肉炎があっても猫ちゃんは食べることができるうえ、
なぜだか歯肉炎事態おさまっていくため、
当院では犬歯以降のすべての上下臼歯、14本を抜歯いたします。
人の臼歯と役割が異なり、ネコちゃんの臼歯は肉を切り裂く役目があるだけです。
食事は丸呑みなので、奥歯がなくなっても食べるのには不自由しません。
通常1泊2日の入院です。
痛みは麻薬でコントロールするので、長年の痛みから解放され、
退院した日から、こちらが心配するくらいに食べれるようになります。
1週間で顔の腫れがひき、薬がほとんど必要なくなり、
1ヶ月もすると痛みのストレスから開放され、
食べれるようになり体重がかなり増加してきます。
このころには、飼い主さんは『悩んだけど、やってよかった~。』と喜んでいただけ、
でっぷり太った猫ちゃんの、糖尿病の心配をしはじめます。
飼い主さんは、奥歯がすべてなくなることの不安、高額な費用、
必ずしも安全ではない麻酔の影響で悩んでしまいます。
また、内科治療で長期間コントロールできることがあり、
多くの飼い主さんはすぐに手術に踏み切ることはできません。
この写真の猫ちゃんは、2年越しに決断されました。
手術して1ヶ月たちますが、猫ちゃんの口の痛みはなく、
食べることに不自由せず、体重は1kgも増えています。
薬が必要なくなるかは、やってみなくてはわかりませんが、
経験上すべての猫ちゃんは快適になります。
しかし、ステロイドを長年使っていたり、基礎疾患があればできない場合もあります。
また、臼歯の抜歯は時間も労力もかかるので、なるべくなら手術したくありません。
私も、できるだけ回避したい手術の一つなのですが、
その処置にみあう成果が伴うことが多いため、患者さんにはおすすめしています。
皆さんも主治医の先生とよく相談して、決断するのがいいでしょう。
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