再生医療=幹細胞治療

ルナ動物病院

2012年07月21日 19:46


当院の再生医療は、欠損部位を新たに作った培養組織で補填するような再生医療ではありません。
ES細胞やips細胞などが有名どころですが、当院でできるのは脂肪幹細胞移植です。
脂肪幹細胞は脂肪、軟骨、骨、骨格筋、心筋、腱、神経、血管などへ分化誘導できる可能性が示されていて、骨髄幹細胞よりも採取しやすく増殖能力も高いため応用範囲が広いのが特徴です。
脂肪再生、骨再生、心筋再生、血管新生、難治性潰瘍などでの応用が可能で、
人医では特に乳がんなどで乳房を失った方の乳房再建手術で、脂肪細胞を増殖させるのに注目されているそうです。
動物医療でも応用範囲は広く、詳しくは、コチラをご覧くださいね。
http://j-arm.com/

さて、実際は・・・
脊髄損傷や椎間板ヘルニアによる後躯麻痺、
癒合不全の骨折治療、
関節疾患で軟骨の再生、
慢性腎不全の症状改善などで応用されています。

今は亡き愛犬ルナちゃんは、大型犬特有の関節炎により長い間痛みと戦っていました。
そこで疼痛緩和を目的に、脂肪幹細胞移植を実施しました。
結果は『良くも悪くもならなかったので』判定不能としてきましょう。
どの様に行うのか、方法をご紹介します。

小指の先程度、パチンコ玉くらいの脂肪を採取します。
これは、別のワンちゃんの採取後の写真ですが、
おとなしい動物であれば局所麻酔で採取可能です。


脂肪細胞から幹細胞を分離し、
培養装置の中で小さな培養液からはじめ、だんだん大きな容器に移しながら、
大事に、大事に、幹細胞を増やしていきます。


細胞が増えないと移植できないため、飼い主様にはしばらくお待ちいただきます。
プロトコルでは2週間の培養期間となっていますが、
増え方を顕微鏡で確認しながら培養すると、平均3~4週間の時間が必要です。

緑のフィルターで観察した脂肪幹細胞は、培養二日目では数少ない三角形の細胞としてみえていますが、11日目でこんなにも増えました。
次の大きな容器に移し替え再び培養です。

細胞を遠心分離し、試験管の底にペレット状になったものが脂肪幹細胞です。ルナちゃんでは関節に注入するためシリンジに分けましたが、腎不全や心不全、損傷して間もない脊髄などでは血管の中に点滴します。

ルナちゃんは、左膝関節・両股関節が変形しています。
このような場合、実際の症例ではフィルムを掛け注射します。

工程はわかりましたか?

脂肪細胞を採取するところで手間がかかりますが、
その後は当院が手塩にかけ細胞の培養を行いますのでご安心下さい。
脊髄損傷はもちろん、腎不全の猫ちゃんの脂肪幹細胞の改善症例も多数報告されています。
今までの治療を受けながら、併用できます。
新たな試みとして、ご検討ください。



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