猫の爪をとる手術

ルナ動物病院

2011年01月21日 19:24

いろいろな手術がありますが、どこまでが神様に許されてるんでしょうか?
『猫の爪を取る手術』は?
日本ではあまり行われませんが、カナダで獣医をやっている友達がいうには、
あちらでは不妊手術とセットで行っているそうです。

ある日、声帯をとる手術のご依頼がありました…
マンションで吠えるため困っているそうです。
お話を伺うと、吠える事をやめさせるための『しつけ』すら行っていません。
動物愛護からも、獣医師の倫理からも『しつけ教室』にかようことをお勧めしたのですが、
果たしてどうなったことやら…
たった一度の電話だけでした。

断尾(洋犬はほとんど断尾されてますよね~)も、
声帯除去(吠えることができない犬を作って、自分はカラオケに行って歌う~)も、
不妊手術(不妊手術で寿命が延びるデーターもあるようなんですが…)も、
健康体に行う手術はどこまでが許されるのか?
いまだに私は悩んでいます。
きっと、死ぬとき(死んだ後)にでも神様がこそっと教えてくれるでしょうか。
とにかく獣医をやっている限り、自分の倫理感である程度線引きするしかありません。

今回『爪をとる手術』をした方は、猫ちゃんをつれて海外に住むためでした。
是非はあるでしょう。
私の倫理観では、一緒に暮らしたいという飼い主様の事情が勝りました。
レーザーで爪をとった猫ちゃんを観察するとほとんど痛がりません。
不妊手術のほうが痛がっているようです。

この手術が動物虐待に感じられたのは、その手術方法です。
昔ながらの爪きりでおこなうと、血だらけになり術後の痛みも激しくなります。
近代的にメスを使っても、麻薬系の痛み止め(フェンニタルパッチ)を使用しなければならず、出血もともないます。
レーザーで行うと、神経や血管のシーリングで術後の痛みもなく出血もありません。
やらなければいけない手術であるならば、より動物にやさしいほうがいいに決まっています。

『爪をとる手術』は、
断尾や断耳よりも動物と猫との関係を良好に保ち、人と人間の共存の役目を果たします。
あぶない!あぶない!
これは、人を咬む犬の牙を切ることを是認するのと同じ、紙一重の理論ですね。
不妊手術は病気にならないためですが、病気になるのが運命だとしたら、
健康体にメスを入れる行為が果たしてだれから認められているのでしょうか?
やはり、私なりの倫理を適用するしかなさそうです。
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