外傷

ルナ動物病院

2011年02月15日 11:10


先日は、臨時休診をいただきありがとうございました。
セミナーは外傷治療〜管理〜外科手術のもりだくさんの内容でした。
皆さんはキズができたときどうしますか?
消毒してバンドエイド貼っておく…
これですっ!!
これだけで、普通のキズは治ってしまうのです。
生き物の体の不思議ですよね〜
ぱっくり開いたキズが接着剤も使わずにだんだん小さくなり、ふさがってしまう。
植物だってこのような機能を備えています。
車や家やパソコンなどの無機物にもそんな機能があれば便利なんですが…
われわれは生物の治る力を邪魔せず、手助けになるように獣医療を行っているのですが、
『邪魔しないように…』これが難しいんです。

一般的に動物はキズをなめて治そうとしますが、これはNGです。
キズの中に入った異物や汚れや膿は取り除かなくてはいけませんので、野生動物ならば仕方ありません。
動物は本能で理解し、唾液のバリアーで空気に触れ乾燥させないようにしているのかもしれませんね。
しかし通常は、なめることでよけいにキズを広げ、ばい菌だらけの唾液を付着させてしまいます。

キズの治しかたの基本です。
キズの中の汚れや異物、膿などは消毒液などで優しく洗い流しましょう。
消毒液がなければ、水道水でも仕方がありません。
生体にとって空気も異物なので、かさぶたができて傷口を塞ぎます。
しかし、実はかさぶたもキズが治ろうとすることを阻害するので、かさぶたがない状態で密閉し、しかも生体内と同様の湿潤した環境のほうがキズの治りは良くなります。
最近よく見かけるキズパワーパットを従来のバンドエイドと比較すると、何倍も治りが早いことに気がついた方も多いことでしょう。
切り傷・擦り傷などは、かさぶたができる間もなく数日内でくっついてしまいます。
もちろん、ばい菌の感染が無い条件が必須です。

われわれ獣医師も、キズをなめさせないようにエリザベスカラー(エリマキトカゲのように首の周りにラッパ状のカラーをつけます。)などをつけたり、包帯をまいたり、服を着せたり試行錯誤いたします。
そんな工夫をしつつ、ばい菌や汚れが付着しないように密閉した環境におくだけで、キズは2週間もすれば自然と治ってしまうことでしょう。
それで治らないキズがあるときは、生体側の問題が何かあるのかもしれません。

キズは自然と治り欠損した皮膚の部分も再生するのですが、再生した皮膚はとても脆弱なものです。
無毛化による見た目や瘢痕化によるひきつれで機能障害が問題になるかもしれません。
2期癒合(結合組織が多い皮下組織)にかける時間と手間、脆弱な皮膚では困るような時必要なのが外科手術となります。
外科は治るまでの期間を短縮し、1期癒合(結合組織のすくない)の機能的なきれいなキズ跡をめざします。
動物ではキズ跡があまり問題にならないことには助かっておりますが、すぐになめたり引っ掻いたりする動物の術後管理は前述のようにかなり大変です。
何もカバーしていなければ、たいていの動物は手術同日にみずから抜糸までしてしまうことでしょう。
しかも犬やネコでは、皮下の血管走行が人のように筋肉から垂直にこないため、皮膚の欠損部を補うための皮弁テクニックに外科医の腕がためされます。

そこで先日のような勉強が必要なんですよね〜。
今回のセミナーも勉強になりました。
休診をいただきありがとうございました。

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