ルナ先生日記

浜松市中区佐藤にあるルナ動物病院 院長のブログです。 動物病院の先生は日頃こんなこと・あんなことを感じています。 ぜひおたのしみください。

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乳ビ胸はやっかいな病気です!!

カテゴリー │心臓・呼吸器疾患

乳ビ胸はやっかいな病気です!!
『乳ビ胸』という病気はご存知でしょうか?
胸腔内のリンパ管(胸管)から、
リンパ液が胸腔内に漏れ出した状態のことを言います。
乳ビ胸はやっかいな病気です!!
症状は呼吸困難です。
内科療法は胸水をひたすら抜き、低脂肪食などでいつか漏れが自然と塞がるのを待つ方法です。
原発疾患があれば、それを治療する必要があります。
乳ビ胸はやっかいな病気です!!
内科療法による治癒率はひくく、外科療法、胸膜癒着などの方法が選択されます。
当院での症例は、外科療法が選択され幸運にも治癒しました。
しかし、何をやっても治らないこともあるのでやっかいなのです。
本日、こうした難治性の病気を持つ飼い主様から、
当院のホームページhttp://luna-hp.ftw.jp/u43998.html
をごらんになりメールのご質問があったのです。

同様の悩みを抱えておられる方もおおいかと思い、返信を公開致します。
苦しんでいる動物が一人でも多く救われることを願っております。

<問い合わせ>
貴医院のhomepage記載の乳ビ胸の欄に掲載の柴犬ととても良く似た柴犬が最近散歩してもハアハアと息苦しくやせ細って来たので・・・・・
・・・・・手術での成功率も低いと言われ途方にくれております。貴医院のhomepageに依ると 「人から応用した有効な内科治療例が報告されている」とのことですが、サプリのことでしょうか? 教えて頂ければ幸甚に存じます。 どうぞ宜しくお願い致します。

<返信>
乳ビ胸は難治性の疾患です。
一番多いのが、特発性と呼ばれ原因不明で発症します。
その他、心疾患(心筋症、フィラリア症など)、胸腔腫瘍などが原因になります。
治療は、呼吸困難は生命の危険があるため乳ビ胸の治療を先行させます。
平行して除外診断を行い、原因がわかり治療効果あれば乳ビの貯留が治まっていきます。

乳ビ胸治療
①胸腔穿刺で胸水を除去します。一般的に長期の治療が必要なため、胸腔ドレイン(胸腔内に管をいれる)留置を行うことで、毎日でも安全に胸水を除去することができます。
②低脂肪食に変更します。
③ルチンと呼ばれるサプリメントを500~1000mgを一日2回投薬する
こうした内科治療で改善なければ、

Ⅰ外科処置
胸管けっさつ術、シャント術、大網癒着術などなど
Ⅱ胸膜癒着術
胸腔内にピシバニールまたはテトラサイクリンなど注入する

以上の方法をすべて行っても治らないワンちゃん・ネコちゃんもいます。

ホームページ症例の柴ちゃんは、内科治療を行っていましたが胸水が止まる事がなかったため外科手術に踏み切りました。
当院では、乳ビ胸の手術は始めてだったので、試行錯誤の手術でした。
この柴ちゃんは神が味方し、一回の手術で完治することができました。

乳ビ胸の動物は、当院が開院して8年間に2頭しかおりません。
手術した柴ちゃん1頭と現在治療中のネコちゃん1頭で、非常に珍しい病気といえましょう。

現在治療中のネコちゃんは、外科手術の難易度が高いため、飼い主様とご相談し、ピシバニールによる胸膜癒着を実施中です。
ピシバニールは免疫賦活剤で、抗悪性腫瘍剤、リンパ管剤として使用される薬剤です。これを胸腔内に週1回1KEから注入、症状を診ながら薬液量を増加させ、胸水がなくなるまで続けます。この治療は、人間でのレポートを参考に行っている治療で、最近動物治験で成功例が数多く報告されております。しかし、教科書上確立された治療では有りませんので、飼い主様のご了解が必要になります。

このように、当院でも試行錯誤して動物とともに、飼い主様とご相談しながら戦っております。

大学病院や2次病院などの高度医療施設に転院できなければ、
近隣の病院でがんばるしかありません。
ご説明したような様々な治療法を、あきらめずに行うことが大切です。
難しい病気であればあるほど、飼い主様や動物と一緒に戦ってくれる動物病院を捜していただくのが良いかと思います。

ご理解いただけたでしょうか?



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この記事へのコメント
胸膜癒着法のためピシバニールを注入していたネコちゃんが、
先日お亡くなりなりました。
ピシバニールの副反応か原発疾患のためか原因は不明です。
お悔みを申し上げます。

いつもそうですが、このネコちゃんでも大いに苦悩していました。
ワクチン1本接種するときもドキドキするので、
本来このような職業は私のような小心者には向かないのかもしれません。
しばし、わたしの苦悩にお付き合いください。

こうした衰弱性難治性疾患は、
内科治療でおしていくか、
思い切って外科手術を選択するかいつも非常に迷います。
飼い主様も病院選びや先生選びで迷いますが、
獣医師も迷っています。

先日も、子宮疾患と診断し半年間内科治療をしていたワンちゃんがいました。
本院の休診日に他院を受診し、
その病院のセカンドオピニオンで決断がついたそうです。
その後当院で手術を行い、
無事お返しできたので手術してよかった症例なのですが、
それは生きていたからいえることです。
現在も別疾患の治療中のため、
今考えても紙一重の手術だったのですが、
少なくとも子宮疾患で死亡することはなくなりました。
この時の決断は、他院の先生が後押ししてくれたものです。

人は意識せず決断しながら生きています。
道路を渡る場所、時間がすこしずれただけで死亡することも・・・。
意識しない決断なのですが、人生をかけています。

治療の場合、猶予ある決断を迫られます。
考えてする決断には後悔が伴いますが、
後悔しないことも意識して最終決断することです。

そんなこといっても、
わが身の消化管に大きな穴が開をあけないためにも、
ストレスかけないようにしたいのですが、
日々後悔だらけですよね~
Posted by ルナ動物病院ルナ動物病院 at 2010年09月02日 12:41
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